ひたちシーサイドマラソン2025は16日、日立市民運動公園を発着とする特設コースで開かれ、男子総合は初出場の阿由葉翔太(ゴーヤ)が2時間28分13秒で優勝した。女子総合は西島百香(GRlab関東)が2時間55分14秒で初制覇した。
男子総合の2位は武大岳、3位は桑名碧人が続いた。女子総合の2位は冨高結香(出雲AC)、3位には平野沙織が入った。
表彰外の招待選手として参加した前回男子総合優勝の岡山春紀(コモディイイダ)は2時間18分19秒、女子総合優勝の松村幸栄(同)は2時間44分38秒で、それぞれ男女のトップの記録で走った。
《ヒーロー》男子総合 阿由葉 ペース貫き快走
タイムを追い求めた先に、栄冠が待っていた。男子総合を制した阿由葉翔太(31)=ゴーヤ=は「まさか優勝できるとは思わなかった」と驚きを隠さなかった。

心がけていたのは「自分のペースで最後まで押すこと」。集団走は意識せず、単独走の中でタイムを刻んだ。
30キロ付近の坂と向かい風に「心が折れかけた」というが、折り返しですれ違うランナーを「ファイトー!」と励ますことで自らも鼓舞。残り5キロ付近で先頭を発見しても冷静にペースを意識し「自然と追い付いていた」。自己ベストを1分以上更新し、初挑戦で2代目王者に輝いた。
コースのきつさに「正直なめてました」と苦笑い。それでも晴天に恵まれた太平洋の景色を堪能し「気持ちよかった」と爽やかに汗を拭い、目標タイムの2時間半も切って自信につなげた。
学生時代は野球少年。幼少期から走ることが好きで、高校からランニングを趣味で始めた。本格的に目覚めたのは3年ほど前。介護の仕事で、夜勤もあり不規則になりがちだというが、練習の強度を調整し休日に追い込み、今では月600キロを走る。レース後のお酒やご飯のご褒美が社会人ランナーの醍醐味(だいごみ)といい、勝利の美酒は「日立の地酒で飲み明かしたい」と笑顔を見せた。176センチ、61キロ。栃木県出身。
■武 万感2位 「最後にやりきれた」
○…男子総合で2位に入った武大岳(21)は2時間29分26秒でゴール。初のフルマラソンで目標だった2時間30分を切り「すごくきつかったが、良い思い出になった」と充実感を漂わせた。

序盤で招待選手が独走する中、2位集団を維持。「アップダウンが激しく過酷だった」が、左手の甲に書き込んだ5キロごとの目標タイムを確認しながらペースを保った。30キロを過ぎたところで足がつりそうになったが、気力を振り絞って走りきった。
武蔵野学院大の4年生。箱根駅伝出場を目指して厳しい練習を重ねてきた。出場はかなわず、競技人生に区切りをつけようとフルマラソンに挑戦した。引退レースを好結果で終え「最後にやりきれた」。来春からは社会人になるが「市民ランナーとして楽しく走る」。
《ヒロイン》女子総合 西島 力振り絞りV 沿道の声援、励みに
女子総合は西島百香(28)=GRlab関東=が2時間55分14秒で制した。10回を超えるフルマラソン挑戦で、初めての栄冠。「まさか1位を取れると思っていなかったのでびっくり」と、声を弾ませた。

前半は前回優勝者で招待選手の松村幸栄(コモディイイダ)と競り合い、上位につけた。20キロを過ぎたあたりで引き離されたが「自分のペースを維持した」と、上りと下りが断続的に続く難コースに向き合った。最後は「何とか押し切った」と走りきり、両手を広げてゴールテープを切った。
静岡県沼津市出身。日立の海沿いを走るコースが、毎年参加している3月の静岡マラソンに似ているという。「練習になれば」と初参加を決めたが、大会1週間前にインフルエンザを患い十分な練習が積めなかった。「やれることはやってきた」と腹をくくってスタートラインに立ったが、走ってみると「坂が予想以上にきつかった」。
くじけそうになった時、励みになったのは沿道の応援。「順位を教えてくれ『頑張れ』って言ってもらえてすごくうれしかった」と振り返った。
初参加初優勝を達成したものの、「最後で落ちた」と自己ベストの2時間48分48秒には及ばなかった。「このコースを攻略できればほかのレースは怖くなくなるはず」と、次回の参加に意欲を見せた。
■冨高 充実2位 夫婦参加、海風受け「感動」
○…福岡から夫婦で参戦した冨高結香(39)=出雲AC=は女子総合2位。沿道の日立市民の声援に「日立の皆さんの優しさを感じた」と笑顔を見せた。

男子総合5位の夫・一成さん(36)=同=とともに普段から日本各地でマラソンを走り、小学生の子どもも長距離走者と、家族で走ることを楽しむ。別の大会で以前、茨城に来たことがあり「また茨城の大会に出たい」と参加を決めた。
下り坂で受ける海風が心地よく、動画で確認していたという海に突き出した日立バイパスを走り「とても感動した」と充実した表情を浮かべた。
100キロマラソンの夫婦合計タイムでギネス記録を持ち、家族にとって走ることは「日常で当たり前」。翌日にはかみね動物園へ行くと話し、笑顔でレースを終えた。
