高橋さん、猫さん 走者応援 コース伴走やハイタッチ

ゴール間際の選手に声をかけて元気づけるゲストの高橋尚子さん(左)=日立市民運動公園陸上競技場

 総勢約4200人が潮風を切りながら日立市の海沿いなどを駆け抜けたシーサイドマラソン。昨年に続き、シドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子さん(53)とリオデジャネイロ五輪男子マラソンカンボジア代表の猫ひろしさん(48)がゲスト参戦した。2人は伴走したり、ハイタッチしたりして市民ランナーを鼓舞した。

 スタートセレモニーで高橋さんは「今日の主役は皆さん。最後の一人までゴールをお待ちしてます」と完走を願い「最後まで頑張ろう」と激励した。
 また、起伏の激しい同マラソンコースを「ハード」とし、「上りは目線を下げて、腕を振る。下りは(歩幅を狭くし足の回転数を速くする)ピッチ走法で」と完走するこつを伝えた。

沿道の応援を受けながら、スタートを切るランナー=日立市民運動公園前

 スタート後はコースの一部に出走し、声援でランナーを後押し。ゴール地点の陸上競技場では、到着した走者をハイタッチで迎え「頑張ったね」「おめでとう」「お帰り」などと声をかけ労をねぎらった。

スタートを切るゲストランナーの猫ひろしさん(前列中央)=日立市民運動公園前

 猫さんは市民ランナーと共にコースを疾走。スタート前には参加者と一緒にお決まりのギャグ「ニャー」を披露し、気合を入れた。応援する市民の声にも応えギャグを連発。沿道との触れ合いも楽しんだ。

日立シーサイドロードを疾走するランナー=日立市旭町

 コースについては坂が多く「修行」と評する一方、「景色が抜群で海の上を走る感覚だった」と太鼓判。「沿道の応援が背中を押してくれた。素晴らしい大会。また参加したい」と笑顔を見せた。

日立灯台を横に駆け抜けるランナー=日立市大みか町

■4200人 工都駆け抜ける

■動画撮影しながら完走 「こわだ君」と「まかラン」さん
 ランニング系ユーチューバーとインフルエンサーの2人が大会を盛り上げた。
 昨年に続き2度目の出場となるユーチューバー「こわだ君」は、エイドステーションや海の景色を存分に楽しんだ。トレードマークの赤い髪をなびかせ、動画を撮影しながら完走した。

ゴールして完走メダルを手にポーズを取る、まかランさん(右)とこわだ君=日立市民運動公園陸上競技場

 コース沿道のエイドステーションで、地元産のシラスやたこ焼き、プリンを食べ、しっかりと栄養補給。安定したペースを刻み、昨年を約8分上回る2時間47分でゴールした。沿道の応援の声が増え、ランナーとも交流し、「ほどよい温かさで走れた」と満足顔だった。

 インフルエンサーの「まかラン」さんは同レース初出場。実業団選手を経て、交流サイト(SNS)のインスタグラムやユーチューブを通してランニングの楽しさを発信している。

 マラソンでは、残り10キロになると自分で1キロごとにカウントダウンするという。「モチベーションが上がり、『しんどい』ではなく前向きになり、ゴールを目指す気持ちになれる」と助言。今季初のマラソンは3時間13分で完走し、「海風が涼しく、快適だった。坂も思ったほどきつくなかった。いいレースになった」と笑顔を見せた。近く動画を公開する。

■凱旋、声援「うれしかった」 日立出身 鈴木聖人さん
 地元日立市出身で、旭化成陸上部に所属する鈴木聖人さん(25)が招待選手として初めてシーサイドマラソンに参加した。「アップダウンが大変だったけど、海沿いの景色がきれいだった」と自身初のフルマラソン大会を快走。地元住民や知り合いからの声援が大きく「うれしかった」と凱旋(がいせん)を楽しんだ。

レース後に笑顔を見せる日立市出身の鈴木聖人さん=同市民運動公園陸上競技場

 鈴木さんは市立助川小、平沢中出身。サッカー部だった中学時代に体力づくりのため陸上を始めた。その後は駅伝の強豪・私立水城高(水戸市)を経て明治大に進学。大学時代には箱根駅伝や全日本大学駅伝などにも複数回出場した。現在は宮崎県延岡市を拠点に活動している。
 「順位より市民ランナーに良い結果を出してもらえるよう走った」と2時間30分を目標に走った。沿道からは「聖人、頑張れ」との声援もあり「競技をやっていて良かった」と笑みを浮かべる。


 今後の目標は来年2月に開かれる延岡西日本マラソンでの優勝と2時間10分以内の記録。「良い練習になった」とし、「地元からの声援が弾みになる」と活躍を誓った。

■太鼓や笛、応援威勢よく 市民ら沿道からエール
 沿道には大勢の地域住民や太鼓保存会などの団体が駆け付け、声援や音色でエールを送った。

力強い音色でランナーにエールを送る久慈浜山車太鼓保存会の会員=日立市久慈町

 スタート地点から約27キロの新茂宮橋付近では、久慈浜山車太鼓保存会(濱連)が地域に伝わる「浜ばやし」や「とおりばやし」を演奏した。会員30人がおそろいの法被に身を包み、太鼓やしの笛の力強い音と威勢のいいかけ声でランナーの背中を押した。


 観客からも「もう少しで折り返しだよ」「頑張って」などと温かい声援が飛び交い、ランナーは手を振って応えた。


 同会の三代俊朗(みよとしろう)会長は「ランナーが音を聞いてほほ笑んでくれるのがうれしかった。一緒に走っている気持ちで演奏した」と振り返った。

■特産品で魅力発信 給食のおもてなし
 発着地点のメイン会場やコースの各地点には給食が並び、特産品などでランナーをもてなした。


 折り返し地点に程近い道の駅日立おさかなセンター前では、久慈学区コミュニティ推進会員36人が久慈浜産のシラスをふんだんに使用した細巻きを4000本用意した。ランナーは一口で頬張り、「おいしい。応援ありがとう」と笑顔を見せた。

シラスの細巻きを受け取るランナー=日立市みなと町


 また、同所では同市中里地区で収穫されたブルーベリーなども提供。このほか、各給食所でたこ焼きや地元菓子店のカステラなどを振る舞った。
 同推進会の石川善憲(よしのり)会長は「ランナーに漁業の町の特産を楽しんでもらいたかった。日立の魅力を少しでも知ってもらえればうれしい」と話した。