日立の地に飛び切りの笑顔が咲いた。2位に8分以上差をつける2時間48分58秒の圧巻の走りで初代女王に輝いた女子総合の松村幸栄(36)=コモディイイダ陸上競技部=は「第1回大会でこの名を残したのはほんとにうれしい」と声を弾ませた。
序盤から飛ばした。前半は1キロを3分50秒台のペースで快走し、後続を一気に突き放した。号砲が鳴った時点では小雨がぱらついていたが、30分後には晴れ間がのぞき、「あの景色に癒やされた」と眼前には大海原に架かった一筋の虹。この時15キロ地点を走っていた松村はまさに敵なしの状況で、苦しい単独走が続いていたが、今大会の醍醐味(だいごみ)とも言える太平洋の絶景が背中を押した。
景色だけではない。沿道に並んだ大勢の日立市民から受けた温かい声援もまた、彼女を奮い立たせた。今年のかすみがうらマラソンを制して連覇を達成するなど本県と縁が深く、「茨城大好きです」と口にする。
スーパーの店員として普段はレジ打ちに従事する傍ら、実業団の一員として己を律し、日々の練習に励んできた。時には仕事の疲れから怠けてしまうこともあったが、そのたびに家族に支えられてきたという。
強い精神力と周囲の助けが合わさって生まれた栄冠。女王は「(来年も)よろしくお願いします」と白い歯を見せた。158センチ、静岡県出身。